自分の頭で考えることができない理由 – 減点主義

自分の頭で考えようと言うけれど

いつでも、ここ最近もよく言われる「自分のアタマで考えよう」

自分の頭で考えるために、いろいろな思考の方法などが提案されています。

・ものごとを考える際に、目的(ゴール)を明確にしよう

・情報を手にした際には、「なぜ」を考えよう

・情報は細分化しよう

・目的は明確に定義しよう

などなど。

しかし、なかなか自分の頭で考えて行動することができません。

自分の頭で考えようとしても、なにか正解を探してしまう。

まわりの意見を気にしてしまう。

自分の意見を公にすることができない。

なぜか。

それは「批判を恐れる」からです。

批判=減点の恐れから、自分で考えることができない

人にとって、批判される、減点されることの恐怖は、意識しておもう以上に驚異です。

そもそも減点主義が蔓延している環境で、自分の頭で考えること自体が批判=減点されるリスクを負うのです。

ノーベル賞を受賞した田中耕一さんの会見です。

 田中さんには通訳がついたが、大部分を身振り手振りを用いながら英語で答えた。研究者の評価方法について「日本は減点主義だが、欧米は加点主義。どんな成果を挙げたかで評価すべき。自分は数えられないほど失敗したが…」と会場を沸かせた。

 

また田中耕一さんのインタビューより

「生涯最高の失敗」朝日新聞社

-エンジニアとして生きる-より

 

島津製作所に入社した理由

第一志望の家電メーカーを受験したが失敗。

指導教官であった安達三郎教授に紹介されて島津製作所を受験。

「鶏口(けいこう)となるも牛後(ぎゅうご)となるなかれ」(大きな集団の中で尻にいて使われるよりも、小さな集団であっても長となるほうがよい)という諺もあることから,就職を決める。

 

レーザーを使って金属・半導体や有機化合物などの分子の重さを量る質量分析装置の開発チームに配属される。自分と同期入社の一人を含め,5人のチーム。全員が化学専攻ではなく,物理や電気を専攻した者であった。

 

自分の興味があることは何でもやるが,興味が無いことは全くやらない性格。

報酬よりも,実験をやっている面白さや,世の中に役立つ技術の「生みの親」の充実感の方に興味を持っている。

 

英国は「失敗」に対する考え方が日本と根本的に異なっている。日本では製品開発で完璧を目指す。英国は,「人間は完璧ではなく,失敗する生き物である。だから新製品も初期はトラブルがあっても仕方ない」という認識がある。

 

 

ノーベル賞を受賞できたのは,一緒に研究していた同僚たち,私たちの業績を世界に広めてくださったコッター先生たち,英語で論文を書くように薦めて下さった松尾武清先生,私たちの業績を公正に評価してくださったヒーレンカンプ先生とカラス先生のおかげであった。

 

新しいことに挑戦する場合は失敗がつきもの。失敗を重ねても挑戦し続けることが大事。そのためには,「減点主義」ではなく,褒めて育てる「加点主義」を採用する必要がある。

 

「今回は結果自体は失敗に終わったけれども,君の研究に対する取り組み方は良かったよ」と励ますのがよい。地道に努力している人には,「いまはまだ会社の利益に貢献していないけれども,よく頑張った」と力づける仕組みが必要。

 

開発から販売までのサイクルを,入社後20年間に4回繰り返し経験してきた。この経験は非常に有益であった。最近は,各部門で専門家を育て担当させた方が効率的という理由で,基礎開発,製品化,組み立て,製品テストのすべてを経験する社員がいなくなった。実際に顧客と話したことがない技術者は,いくら顧客の要望を理解したと思っていても「肌でわかる」ことは難しい。マニュアルや仕様書を書く人にとっても,具体的なユーザーを思い浮かべて書けるのと,想像で書くのとでは出来上がってきた文章にはっきりと差が出る。

 

何かおかしいと思う結果がでたときに,常識にとらわれてその結果を見逃さないこと,理論と違った結果が出たときに失敗した,実験が間違っていると決めつけないこと,それに尽きる。

 

見る(see)ことと認識(recognize)すること大きく違う。

 

加点主義では、自分で考えることそのものが加点です。

 

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